Frank Sinatra「No One Cares」Capitol W-1221

Noonecares_2

前回のJoanie Sommersのアルバムから「Why Try To Change  Me Now」繋がりで今回はFrank SinatraのCapitol期の秀作バラードアルバム「No One Cares」のご紹介。

「Why Try To Change  Me Now」この切ないバラードをSinatraは9年間続いたColumbia社との最後のセッションである1952年9月17日に録音し同社を去っています。
https://www.youtube.com/watch?v=aKsmKrYWBmE
40年代半ばにTommy Dorsey楽団を退団し飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼の美声。50年代に入りそれに陰りが見えるとColumbiaは彼を色々な曲、企画で売っていこうとしたわけです。しかしプロデューサーのMich Millerの企画ではSinatraの唄を活かすことが出来ず、Columbiaとの契約は早期解除という結果になってしまいました。
しかし、この50年代初期の彼の声は、40年代の美声の替りに深い陰影を持つ声に変わりつつあったわけで、それを生かせず契約解除を進めたColumbiaの最後の録音曲のタイトルが「Why Try To Change  Me Now」とはまさしく彼の気持ちを吐露した選曲で有ったのかもしれません。
Sinatraは次のレコード会社契約を当時新興で自分の自由が効くであろうCapitol社と結び、多くの優れたアルバムをリリースしていきます。
Columbia時代から優秀なアレンジャーに恵まれていたSinatraではありましたが、Capitol契約時それまでの腹心のアレンジャーであったAxel Stordahlがツアーに出てしまった結果、更なる躍進を試みるため、新たなアレンジャーにスイング曲ならBilly May,バラードであればGordon Jenkinsを希望しておりました。
しかしCapitolが用意したアレンジャーはモダンなジャズセンスが光る新鋭のNelson Riddle、この出会いがSinatraの唄をさらに深くそしてモダンなものにしていくことになりました。
しかし前述のアレンジャーたちとのコラボを諦めていたわけではなく、特にGordon Jenkinsは同じCapitolにおけるNat King Coleのバラードアルバムでのそのストリングスの巧みな表現に惹かれオファーをし続けていたわけです。
紆余曲折はありましたが、JenkinsとはCapitolで3枚のアルバムを作っています。
1枚目が秀逸な静寂のバラードアルバムW-855「Where Are You」、2枚目がクリスマスアルバムのW-894「A Jolly Christmas From Frank Sinatra」、そして3枚目が今回ご紹介するブルー・バラード・アルバム W1221「No One Cares」です。
木管と弦の低く広がる霧の中に深く響くSinatraの苦味を増した哀切感漂う声のこのアルバムのB面2曲目に収められているのが「Why Try To Change  Me Now」の再録ヴァージョンです。
https://www.youtube.com/watch?v=Qdgbrblz76s
Columbiaでこの曲を吹き込んだとき彼は37歳、そしてそれから7年の歳月が流れ40代半ばで再録音されたこのヴァージョンは、甘さが影を潜め深い陰影をもったバリトンヴォイスにJenkinsのストリングスアレンジが絡んだ秀逸な録音となりました。この曲に限らずこのアルバム全般でSinatraは歌詞を噛み締めるように唄い、そのために生まれる「間」にストリングスが浮き上がり、曲によっては声と弦のコール・アンド・レスポンスさえ生まれる、甘美だけれども得も言われぬ緊張感が漂うアルバムとなっていると思います。収録曲はTommy Dorsey時代やColumbia期の曲の再録が多いのですが、中でもDorsey時代初期のヒット曲「I Never Smile Again」の解釈が年輪を感じさせます。
「君がいなければもう微笑みやしない」という若い恋心を歌ったこの曲を、「今愛する者を失うともう誰も愛する気持ちも時間も無い」ことの寂しさ切なさを唄う歌に昇華させています。
59年というと時代はステレオ録音時代に入っていますが、私所有のオリジナルアルバムはモノラル盤。しかし弦の響きが重く広がる優れた録音となっています。ちなみにあわせて所有しているステレオ盤は80年代東芝からリリースされたもので、このアルバムの録音セッションで録音されながら、オリジナル発売されたときに未収録であった「The One I Love」が収録された当時の貴重盤です。

Side A
1. When No One Cares
2. A Cottage For Sale
3. Stormy Weatherter
4. Where Do You Go?
5. I Don't Stand A Ghost Of A Chance With You
6. Here's That Rainy Day

Side B
1.  I Can't Get Started
2. Why Try To Change Me Now?
3. Just Friends
4. I'll Never Smile Again
5. None But The Lonely Heart

» 続きを読む

| | コメント (0) | トラックバック (0)

Joanie sommers「The “Voice” Of Sixties!」Warner Brothers W1421

Joanisommers

3年ぶりのブログの更新は前回のDinah Washingtonのアルバム「I Concentrate On You 」タイトルから曲つながり。

I Concentrate On Youという曲、あなたに夢中と意味ですけれど「Concentrate On」を辞書で調べると「集中する」「全力を注ぐ」「気を入れる」となっておりまして、要するにかなり気の入ったご執心状態であるという事ですね。Dinah Washingtonのドスの効いた唄でうたわれるともう絶対逃げられないという感じですが、Joanieのキュートな声で囁かれると受ける側もそれこそ一気に気が入っちゃう感じになりますね。

ということで、今回はこの曲が入っている、Joanie sommersのデビュー2作目のアルバム「The “Voice” Of Sixties!」のご紹介。このアルバムはMarty Paichの指揮編曲で録音された彼女のデビューアルバム「Positively The Most!」がリリースされた60年の翌年、今度はNeal Heftiの指揮編曲のもとその名も「60年代の声」というアルバムタイトルでリリースされた彼女の2枚目のアルバム。

既に前年「One Boy」のシングルヒットでポップスターの道を歩き始めた彼女ですが、デビューアルバムもこの2ndアルバムもジャズのアレンジャーによるスタンダード集。シングル盤は若者向けのポップな曲で、アルバムはスタンダード曲でLPの購入費を賄える大人の懐を狙うという当時のレコード会社のよくある戦略(Paul AnkaBobby Darinなどこの手の売り方が当時一般的でした)。

しかし同じスタンダードを歌うにしても50年代の歌手とは趣の違うその声はちょっとハスキーだけれどキュートな哀切感のあるもの、まさに60年代の新しい唄声だったわけです。

I Concentrate On You」を聞いてみるとWhenever skies look gray to me and trouble begins to brewと言う出だしをWhenever ski(h)es look.. gra(h)y to me(a) and trouble begins to(uah) brew(hu) 歌っている。

https://www.youtube.com/watch?v=ifu9oJQkL9A

つまり( )の部分に聞こえるか聞こえないか程の小さな溜息を入れているわけでこれが、聞いているほうにはキュンキュン来るわけですね。そんな彼女の歌がさらに切ない旋律と歌詞を得ると名唱を生む、B1曲目「Why Try To Change Me Now」がこのアルバムのベストでしょう。

https://www.youtube.com/watch?v=niZOToX7bd8

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

Dinah Washington [I Concentrate On You] Mercury MG20604

I_concentrate_you

Dinah59年に放った「What A Difference A Day Makes」はBillboard45位まで登るヒットとなりました。 

なんだ45位かと思われるかもしれませんが44位がElvis Presleyの「I Need Your Love Tonight50位がRay Charlesの「What’d I Say」ですから、凄いことだと思っていただきたいです。 

因みにこの年の第一位はJohnny Hortonの「The Battle Of New Orleans 

以下2位にBobby Darinの「Mack The Knife」、3位. Lloyd Priceの「Personality、4位はFrankie AvalonVenus」、5位にやっとPaul AnkaLonely Boy」、6位に再びBobby Darinで「Dream Lover」というすごい年。 

ロックンロール旋風が少しポップな曲に風向きを変え、Bobby DarinFrankie AvalonPaul Ankaといった若い世代を購買層に狙った歌手・曲がヒットしている時代に45位のヒットをスタンダー曲で成し遂げるというのは凄いことだと思うのです。

 

ヒットの要素にこの時代既に黒人のR&Bが市民権を得たなかで、甘いストリングスに塗されたこの曲が3連のバラードだったことが挙げられると思います。 

3連のバラード、つまりDoo-Wopやロカビリー歌手が唄うバラードで使うリズム、いわゆるロッカ・バラードと言われるバックビートの効いたバラードに近いリズムが彼女のブルース唱法に見事にマッチして、得も言われぬ、アーシィだけれどモダンな雰囲気を醸し出したからだと思います。 

この3連こそがスローブルースの3連ののりでポピュラーを歌いこなす彼女の魅力を開花させたのではないでしょうか。

 

Belford Hendricksによる、この3連のバラードに甘いストリングスとコーラスを塗すアレンジに気を良くしたプロデューサーのClyde Otisは、翌60年から61年の初頭までこの手のアレンジのバラードを彼女に大量に歌わせ録音します。 

埋もれているスタンダードの歌曲を、大衆に浸透してきた黒っぽさを強調した彼女の唄で歌わせることで、2匹目What A Difference A Day Makes」のヒットを生みだし、彼女をJazzR&Bの女王ではなくポピュラーシンガーの女王に登りつめさせようとしたわけです。 

そんな録音の中からコンパイルして59年、「Unforgettable」(MG20572)のあと60年に「For Lonely Lovers」(MG20614)と共にリリースされたのがこの「I Concentrate On You」です。 

Dinah自身もポピュラーシンガーの女王の地位は何よりも望んでいた場所だったのだと思います。 

それはこの時期の録音にFrank Sinatraの持ち歌を数多く録音していることでも察しられます。 

[Lean Baby[Time After Time][This Love Of Mine][I’m Fool To Want To You]のような比較的取り上げられることの多い曲の他に「Everybody Loves Somebody」のようなDean Martinがヒットさせる前に、Sinatraが2度も吹き込んみながらヒットさせらなかった曲まで吹き込んでいるのは驚きです。 

ポピュラーシンガーの女王の地位に憧れる彼女としてはポピュラーシンガーの帝王であるSinatraに憧れ、彼の歌を唄うというのは自然なことだったのではないでしょうか。 

これらの曲の選曲はプロデューサーの意思だけではなく、明らかに彼女の意思があったのではと思います。

 

ということでこの「I Concentrate On You」はSinatra57年のシングルチャート60位の曲「Crazy Love」の濃密なカバーで始まります。 

この曲はPaul Anka58年のヒット曲「Crazy Love」とは同名異曲、Paulの「逃げ出すことのできないほどの狂おしい恋の虜になってしまった想い」をストレートに歌った曲とは違い、まるで若い時の様に狂おしい恋に陥っている自分を楽しんでいる大人の恋の歌。 

殆どカバーされることのないこの曲を彼女は58年のNewportJazzフェスで唄ったあとここでも再録している、つまり2度も録音している訳です。 

これは恋多き女の彼女としては、まさにハマリの曲であるとともに、Sinatraフリークであったであろうことを印象づける選曲です。 

この曲を含め全曲を、体のなかでリズムをシンコーペートさせ、その上にフレーズを載せて唄う、思い切りタメを利かせて唄い始める場合は、ゴスペルやブルースで云うシャウトつまり唄い出しでひと節軽く唸ってから唄う、フレーズにメリスマを効かせさらに短く切る等ブルースの乗りで唄い切っています。 

Fool That I Am」「I Concentrate On You」、さらに同じ乗りで歌われる「Good Morning Heartache」を聞かされているとどっぷりと彼女の世界に浸っていることの快楽に溺れてしまいます。 

この時期台頭してくる新しいR&B、つまりソウルミュージックも彼女のソウル度に拍車をかけたのかもしれません。 

本来彼女が影響を与えたR&B唱法が淘汰されたソウルミュージックに、彼女がまた刺激を受け彼女の歌を形作っていくそんな時代だったのだと思います。

 

そんな彼女の自信が現れているかのようにキュートに笑うポートレートをジャケットにしたこのアルバムがどれだけのセールスを得たかはわかりませんが、この年彼女はBrook Bentonとのデユエットアルバム「The Two Of Us」をリリース、その中に収録されている「A Rockin’ Good Way」をシングルカット、ヒットチャートの75位まで引っ張り上げるのです。 

Ray CharlesGeorgia On My Mind」が同年の78位という事実からするとかなりの健闘ということになります。 

2年続けてのヒットもあって彼女もいよいよポップチャートに進出、ここでも女王の位置をつかめると確信したのでしょうが、会社の売り方に問題があったのか彼女の唄が万人のものになるには時期早々だったのか、その後もアルバムを出し続けるのですが、結局その位置に座ることは叶わずに彼女は62年、Mercuryを去りRouletteへと移籍して行くのでした。

 

 

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

Dinah Washington「The Queen」Mercury MG20439

Queen

このコラムも更新がとぎれとぎれになってしまいましたが、いよいよ300枚目のアルバム紹介です。

記念すべき300枚目はやはりDinah Washington

前回の「A Stranger On Earth」からDinahつながりで彼女のMercury時代中期のある意味ひとつの頂点言えるアルバムThe Queenを取り上げることにしましょう。

なぜ「ひとつの頂点」なのか?

彼女はMercuryと契約してから多くのレーコーディングを行なってきましたが、1953年頃よりJazzに傾倒したアルバムの録音を始めています。

著名なアルバムとしては、良く彼女の代表作として紹介されることの多い「Dinah Jam」が挙げられます。

しかし私はこのアルバムは彼女の良さが出ているとはあまり思いません。

スタジオでの白熱のJamセッションをライブで録った臨場感はあるのですが、セッションという他のメンバーよりも自分を強調する状況での彼女は、大きな声で強くシャウトする場面が多く(もちろんそれも彼女の彼女らしい一面なのですが)、一語、一フレーズを類稀なブルースフィーリングでじっくり歌い込む彼女の最良の部分が、喧騒にまみれて勢いで歌を唄いきってしまって活きていないと思っています。

しかし現在(2011)日本のレコード会社がCD化している彼女のオリジナルアルバムはこの「Dinah Jam」とMercury後期のヒットアルバム「What A Difference A Day Makes」の2枚だけなのです。

私はDinahを初めて聞く方に絶対「Dinah Jam」を勧めません、これを最初に聴くことによって彼女を大きな声でガンガン唄う黒人女性と思われ、その他の彼女のアルバムが聴かれなくなってしまうことを恐れています。

Mercuryは「Dinah Jam」の録音された1954年の前年頃よりJazzコンボでの録音を増やし、自社のJazzレーベルであるEmarcyで「After Hours With Miss D」「For Those In Love」「The Swingin’ Miss D」などの非常に優れたJazz Vocalアルバムをリリースしています。

JazzサイドのDinahを聴くなら「Jam」より先にこれらのアルバムを聴かれることをおすすめします。

情けないことに国内プレスはありませんが、輸入盤なら安価に入手できる時代となりました。

彼女はEmarcyでさらにゴージャス感のあるアレンジの秀作「Dinah」「In The Land Of Hi-Fi」、そしてMercuryからFats WallerBessie Smithへのトリビュート2作をリリースし、そして58年にあの「Newport Jazz Festival」への出演と、Jazz Vocalistとしての高みに昇っていきます。

Newport」での実況盤「Newport’58」がリリースされた翌年、同フェスのドキュメント映像を編集した映画「Jazz On A Summer’s Day」が封切られた59年に、EmarcyではなくMercuryからリリースされたのがこの「The Queen」です。

59年のリリースとなっていますがほとんどの音源が録音されたのが57年、まさに彼女の知名度が上がっていた時期にポピュラーレーベルのMercuryから、その名も彼女の輝かしい俗称「The Queen」のタイトルで満を持して出された頂点の1枚だということになります。

アルバムの1曲目は「All Of Me」。

Newportで歌われ、映画「Jazz On A Summer’s Day」で彼女を強烈に印象づけたこの曲は、実はNewportのライブの8ヶ月前に一度スタジオ録音されていた訳で、それがあのコンサートでの自家薬籠中に歌う彼女につながっているのかなと納得します。

B面の1曲目はさらにこのアルバムで最も重要な曲「I Remember Clifford」が収録されています。

あの「Jam」で共演したClifford Brown56年に自動車事故で亡くなり、Benny Golsonが翌年作曲したこの哀悼曲を一番初めに録音したのはDinahではないかと思います。

*因みにCarmen McRaeDeccaのアルバム「Carmen for Cool Ones」の為にこの曲を録音したのが5712月、Dinahのこの録音は11月)

Clifford競演した彼女だからこそこの曲を最初に唄う権利と技術も併せ持っていたわけで、それがこの名唱を生み出していると言っても良いのではないでしょうか?

亡きCliffordの思い出を切々と感情を込めて唄う導入部、溢れんばかりの想いをひたすら抑えて迎える終章、まさに絶唱です。

彼女の想いを代弁するかのようなラストのトランペットソロ(多分Clark Terry)等アレンジも秀逸なこの素晴らしい曲が収められている、彼女のひとつの頂点と位置づけても良いアルバムが現在(2011年)、アメリカ本国でもCD発売されていないのがなんとも残念でたまりません。

このアルバムがリリースされた59年、Mercuryはあの「What A Difference A Day Makes」を発売、次のターゲットであるポピュラーヴォーカルの頂点を目指す時代が始まって行くのです。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

Dinah Washington「A Stranger On Earth」Roulette SR25253

Stranger_on_earth2

今回は Billie Pooleがアルバム「Sormonette」で唄ったDown In My Own Tears」繋がりでDinah WashingtonRoulette時代のアルバム「A Stranger On The Earth」のご紹介。

実はDinahはこのRay Charlesの創唱したR&Bの名バラードを人生で2度録音しています。

最初の録音は1956Mercury Record時代、ちょうどRayの吹き込みの1年後ぐらいのことになると思うのですが、タイトルを「I’ll Drown In My Tears」として

とても素晴らしいR&B,Soulヴォーカルの化身のような録音を残しています。

しかし、どういうわけかMercuryはこの録音をレコードにしていないようです。

私の所有している「The Complete Dinah Washington On Mercury vol.5」の解説にはこの曲は未発表ということでレコード番号が振られていないのです。

この時期はMercuryが「For Those In Love」「The Swingin’ Miss D」「Dinah」「In The Land Of Hi-Fi」という彼女の人生の中でももっとも充実したJazzやジャーズィなスタンダードアルバムをリリースしていた時代。

会社の方針はあの「Dinah Jam」で注目を集めたあと、上記のようなJazzよりのアルバムをリリースすることで彼女をSarah Vaughanよりもさらに黒いJazzヴォーカリストとして位置づけたかったのかもしれません。

そんな時期このSoulヴォーカルの化身のような「I’ll Drown In My Tears」をリリースすることは戦略的に躊躇することだったのかも知れません。

それから5年後、1962年彼女はMercuryからRouletteに移籍します。

そして63年に亡くなる短い期間に90数曲の録音と9枚のアルバム残しています。

ここでタイトルをDown In My Own Tears」に戻した録音は2枚のアルバム「Dinah 63http://bluesvoice.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/dinahwashington_2e65.html

今回ご紹介する「A Stranger On Earth」に収められて発売されています。

この2枚のアルバムに収められているヴァージョンは同じテイクのものだと思いますが、時間があればピッチ等を測ってまったく同じものかチェックしてみたいと思っています。

このルーレットというレーベルはJazzからPopsまで幅広く、悪く言えば節操なくいろんなジャンルのポピュラーレコードを集中的に量産したレーベルですが、それがJazzBluesR&BだとジャンルにこだわることなくDinahのありのままの唄でより自由でモダンな歌を残す結果になったのだと思います。

この「A Stranger On The Earth」は彼女が亡くなってからリリースされたもの。

彼女の残された録音と既発アルバムからブルージィな曲、ブルースよりの曲を集めてアルバムとしてまとめています(本来この曲は「Dinah 63」に収められ、彼女の死後、よりブルージーな選曲の「A Stranger On Earth」に再収録されたものと思われます)。

彼女はデビュー時から「ブルースの女王」と呼ばれていましたが、あまりにもはまりすぎているため12小節のブルースを唄ってもあまり印象が残りません。

やはりスタンダードをブルースにして唄ってしまう、その感触がよいわけでそのもっともよい部分が表れるのがやはりこの曲Down In My Own Tears」のようなソウルバラードだと思います。

このルーレット録音では混声コーラスを従え、まるでゴスペルのようなコール&レスポンス風のアレンジで歌っています。

深さではMercury録音に軍配が上がるかもしれませんが、モダンさではこのルーレット録音に惹かれます。

そう意味でタイトル曲の「A Stranger On Earth」も彼女の黒さとモダンさが絶妙にブレンドされた佳曲だと思います。

このような録音を残したDinah、本当にあのまま彼女が生き続けて、唄い続けていたならR&Bにポピュラーヴォーカルにどのような影響を与え続けていったのだろうかと悔やまれてなりません。

そして彼女の偉大な功績がルーレットという,何でもありのレーベルで終わったことによって埋もれてしまったことも非常に残念です。

この時期の彼女の歌がもっと聞かれ、再評価されることを心から願います。

ルーレットはEMIに吸収され、今ではCD化された作品も多く比較的容易に聞くことができるアルバム多くなってきました、このブログにお立ち寄りくださった方、是非一度お聞きになることをお勧めします。

*このアルバムでは「The Blues Ain’t Nothin’ But A Woman Cryin’ For Her Man」「Nobody Knows The Way I Feel This Morning」「Me & My Gin」などのストレートな12小節ブルースも収められていますがMercury時代のブルースよりもリラックスしてモダンです。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

Billie Poole「Sormonette」Riverside RLP 425

Billie_poole_2

前回Mysticsのアルバム紹介で「Sunday Kind Of Love」をさながらDoo Wopグループの課題曲と申しましたが、この曲は黒人系シンガーに好まれるようで、Dinah Washington2度、影響下にあったEtta Jamesも名盤「At Last」で取り上げています。

これら3枚のアルバムは既に当ブログやHPですでに取り上げていますので今回はRiversideレーベルのBillie Poole1stアルバム「Somonette」でのご紹介としましょう。

女性Vocalのレコードを聞き集める指針に使用されることで有名な「ジャズ批評/女性シンガー大百科」の中で黒人女性ヴォーカルに造詣の深い原田和典氏にして「原稿を書く前日まで知らなかった」と書かれた彼女Billie Poole彼女のような才能が有って、一流のJazzレーベルに2枚もアルバムを残しながら、知名度が低い歌手がいるということ、黒人のソウルフルなシンガーが当時Jazzレーベルでアルバムを出し続けていくことの難しさが、いみじくも原田氏のコメントに現われているようです。

もしかするとRiversideは彼女をJazzシンガーではなくてSoulシンガーで売り出したかったと言うかSoulファンも取り込みたかったのかもしれませんね。このアルバムが発表されたのが1962年、アルバムの一曲目がRay Charlesのヒット[Down In My Own Tears]ということがレーベルの戦略だったのか、彼女の歌いたい曲だったのか。どちらにしても、もろソウルシンガーののりでこの曲を歌いきるパワーはJazzシンガーの枠では納まらなかったであろうことを想像させます。2曲目は一転してJazzバラード然とした伴奏で唄われる「Lazy Afternoon」、ソウルフルですが抑えた表現がなかなか良いです、3曲目はゴスペルチックな導入部から重厚にスイングする「Sometimes I’m Happy」、ここまで聴き進むと彼女の歌唱がもろDinah Washingtonの影響下にあるのがわかります。

続いDinahも歌っていたEllingtonの「Rocks In My Bad」ではアーシィなシャウトを聞かせるかと思えば、「Sunday Kind Of Love」はしっとりと語りかけるかのように唄いこむ導入部から思いのたけを切なくぶつけエンディングへ導くとかなり技巧的な面も見せます。アルバムを通して聴いてもこの「Sunday Kind Of Love」の表現はとても落ち着いていて、彼女がただのシャウターでは無いことを主張していると思います。ただ、Riversideがどのように彼女を売り出していくか、彼女の可能性を一枚のアルバムで全て収めようとしたためか、アルバム全体を聴きとおすと少しまとまりの無い印象になってしまったのは否めないところです。

結局2作目の「Coffessin’ BluesRiverside RM458ではJunior ManceトリオにKenny Burrllを加えたJazzコンボでBlues,Gospellに根ざしたまとまりの良いJazz Vocalアルバムを作ったものの、このレーベルでは彼女をこのまま生かすことができなかったようです。このあともう少しソウル系のレーベルが彼女の良さを生かすアルバムを作っていけばもっと残っていける人だったのではないかと思うことしきりです。

Dinahの最初の録音はこのHPで紹介している「Queen」で聴かれますhttp://homepage3.nifty.com/bluesvoice/sakusaku/1_1.html

Dinah2度目の録音はこのアルバム「What A Diff’rence A Day Makeshttp://bluesvoice.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/dinahwashington_ff02.html

Etta[At Last]はこちらhttp://bluesvoice.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/ettajamesatlast_c706.html

| | コメント (4) | トラックバック (0)

「The Mystics And The Passions」Laurie LES4010

Passion_annd_mystics

黒人Doo Wopグループが一世を風靡すると、白人たちも我先にとコピーを始め、コーラス・グループを結成しだしました。

それが白人Doo Wopグループ。 

Jo Staffordの「You Belong To Me」をリバイバルヒットさせたThe Duprees、「Since I Don’t I Have You」のヒットで知られるThe Skylinersなどが有名なところででしょう。

ニューヨークにあったLaurieレコードはBelmontsMysticsPassionsなどの白人 Doo Wopグループを多く抱えていたレコード会社でした。

今回ご紹介するアルバムは「Gloria」つながりでCadillacsの「Gloria」をカバーしてヒットさせたPassionsと同じレコード会社のMysticsをカップリングしたその名も「The Mystics And The PassionsLaurie LES4010

Jimmy GallagherをリードシンガーとするThe PassionsGloriaの黒人Doo Wopを彼らなりに昇華して白人層にも受けいれられるようクリーンにしているものの、コンセプトは黒人Doo Wopの常套句甘い3連バラードとノベルティなジャンプナンバーで幅広いファン層獲得。このアルバムで聞かれる「Gloria」はCadillacsよりさらに甘いのですが聞き比べると薄い感じがしてしまうのはしょうがないところ。その分、白人層に、特に若い女性たちには大いに受け入れられたのではないでしょうか?

対するMysticsは代表曲の「Hush A Bye」(アイルランド民謡をベースにしたあの哀愁あふれるHush A Byeとは同名異曲)がBeach Boysにカバーされたようにオリジナルはよりポップでその後のアメリカンポップソング然とした曲が多いグループ。簡単に表現するとPassionsは黒人Doo Wopを白人向けに、Mysticsはよりポップスコーラスを目指したグループということになるでしょうか。このアルバムはそんな2組の個性を明確にした選曲が楽しめるアルバムになっていると思います。

このアルバムでは特にMysticsDoo Wopの次に向かう方向性が斬新なのですが、Doo Wopの再発で有名なCollectablesから出された編集盤「The Mystics 16 Golden ClassicsCOL5043では黒人Doo Wopグループがよく取り上げるスタンダード・ポピュラーソングを彼らと同様に3連バラードで唄っている曲もコンパイルされており、スタートはやはり黒人Doo Wopのコピーからスタートしたであろうことがしのばれます。スタンダードの「Again」、「Over The Rainbow」等をDoo Wop風に唄っているのですが、黒人グループのような重厚さは希薄です。しかしその青臭さが逆に当時の女性ファンの心を捉えたのかもしれませんね。

The HarptonesThe Marcelsが得意としている「A Sunday Kind Of Love」は正統Doo Wopコーラスを彼らなりに重厚にかつロマンティックに聞かせてくれます。この曲は同じく白人グループのThe Regentsなども取り上げており、さながらDoo Wopグループの課題曲のようになっています。機会があれば聞き比べ、編曲やハーモニーの違いの妙を楽しんでみるのも面白いかもしれません。

Mystics

| | コメント (0) | トラックバック (0)

The Cadillacs 「Crazy Cadeillacs」Jubilee JGM1089

Cadillacs2_3

Milles Brothersが後世のコーラスグループに与えた影響は多岐にわたると思うのですが、まずBarber Shop Groupとして市中の気軽な友人たちが声を合わせてみることから始めるということ。

そして器楽的アプローチ、特にベースパートの上にハーモニーを重ねていくことなどがあげられると思うのです。このベースパートのボン・ボボボ・ボンという音、黒人霊歌やブルースのコール&レスポンスから来るシャウト、掛け声、これが後のDoo Wopコーラスの基礎になっていったのではと思っています。もちろんDoo Wopはゴスペルグループやジャズコーラス等色々なコーラスのひとつの集積として生まれたものですが、そこにMilles Brothersの存在も大きかったと思っています。そんなDoo Wopグループ、50年代、星の数ほどのグループが生まれていますが、今回はMills Brothersの歌ったGloriaをヒットさせたThe Cadillacs2Nd アルバム「The Crazy  Cadillacs」のご紹介。

彼等は50年代初期にニューヨークで結成、キャッチーな振り付けとゴージャスなグループネーミングで売り出されたそのデビュー曲がこのGloriaだったわけです。発売当初は大きな売り上げを上げたわけではないのですが、Doo Wopのスタンダードとなってその後多くのグループに取り上げられる名曲となりました。グループ自体は当時のトップグループであったCoastersのレパートリーのようなノベルティなアップテンポの曲をコミカルな振り付けで歌うことによって人気を博していきました。

このアルバムは2Ndアルバムにしてこのデビュー曲が収められているのですが、グループの性格を現すようにバラードとポップなアップテンポの曲が絶妙に配分されています。このころのDoo Wopグループのアルバムによくあるポピュラースタンダードを3連のバラードで唄うと言う試みがなされていないのが彼等のアルバムの特徴です。その後彼等は他のDoo Wopグループの御多聞にもれず、分裂後活動を縮小休止してしまうのですが、90年代末に行われた50’s60’sDoo Wopグループを一同に会した大きなDoo Wop Showに出演し元気な姿を見せています。

そのときにも当然このGloriaを歌っているのですが、Showの後半複数のグループがこのGloriaを唄い競うコーナーがあって、改めてこの曲がDoo Wopグループに与えた影響の大きさを思い知らされます。

このライブは映像化されて「Doo Wop 50」と言うDVDVideoで見ることができます。Cadillacsが唄ったあと、当時この曲をカバーしていた白人Doo WopグループPassionsのリードシンガーJimmy Gallagherが唄うと、同じくこの曲をヒットさせたVito & the SalutationsVito Balsamoがブリッジを唄い、最後はやはりこの曲の録音を残している The Channels Earl Lewis が絶妙のボイスコントロールで唄いきって大円団という涙ものの映像です。Doo wopファン、コーラスファンは必見です。

Doowop50_5

| | コメント (0) | トラックバック (0)

The Mills Brothers「Memory Lane」DECCA DL 8219

Mills2

前回のDotでの代表連作に引き続き、今回は彼等の全盛期Decca時代のアルバムを紹介。

デビュー時は“Four Boys And Kazoo”と呼ばれた彼等、コーラスと間奏にカズーを吹くという大衆的なバーバー・ショップ・コーラスグループが本番でカズーを忘れたことによって楽器の声帯模写でつないだことが、ギターと厚みのある斬新なコーラスでその後のモダンコーラスグループの祖となるハーモニーを生み出したわけです。

このアルバムを裏返すと曲目ごとに「Vocal and Guitar」つまり「それ以外の楽器は使っていない」と表記されていますが、確かに彼等の古い映像を見ると長男のJon Jr.がテナーギターで伴奏しながらベース音を口でハミングしていく上を3人の弟たちがハーモニーを重ねて、いかにもリズムコンボをバックに歌っているような効果を出しています。

ライブで彼等はJohnのベース音だけではなく、間奏のペットやトロンボーンなどの模写をして4人だけで歌っているとは思えないサウンドを作り出していたのですが、彼は30年代に亡くなっており、父親のJohn Sr.がベースパートを担当、ギター奏者は別にいるというユニットになりました。

そのJon Sir50年代に引退しており、このアルバム収録音源に彼の声が含まれているのかはよくわかりません。

それというのも聴こえてくるベースの音が肉声で作られているにしては非常に重厚であるからで、これがSrの声だとしたらものすごい技術ですが、どうなんでしょう?

コーラス自体にも楽器奏法や編曲の手法を取り入れたモダンコーラスの祖ともいえる高度な技術で組み上げられてると思うのですが、そんな難しさを表立って感じさせないスムーズで柔らかいアンサンブルに心が癒されます。

決してシャウトしない穏やかな唄で選ばれたアルバム収録曲は今では聴かれなくなった曲も多いのですが、「Nevertheless」「Lazy River」といった時代を超えて歌いつがれていった曲もあって「本来の曲の姿」とは何かを教えてくれます。

私的には、その後彼等の意思を更に時代の流れによって昇華させていったDoo-Wopグループたちによって好まれた曲「Gloria」の素朴な唄に癒されます。

彼等の飾らない懐かしい歌声を聴いているとあの二人で歩いた「思い出の小径」が二人で聴いた「思い出の旋律」がよみがえる、そんなジャケットも素敵な

Mills Brothersのアルバム。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

The Mills Brothers & Count Basie「The Board Of Directors Annual Report」Dot 25888

Mils1

Cherry1930年代にDon Redmanが書いた曲。

いかにも30年代という時代がうかがえる、始めて聞く人でも懐かしさを感じさせる曲だと思います。

前回ご紹介のRay Charlesの心を揺さぶる唄も良かったのですが、我々の世代ですとStanley Turrentine70年代にCTIからリリースした同名アルバムでのヴァージヨン。彼の泣きのサックスも良かったけれど、フィチャーされたMilt Jacksonのヴァイブの美しさも格別でした。

さて1968年のこのアルバム、「The Board Of Directors Annual Report」でのMills BrothersのヴァージョンはCount Basieに煽られてジャーズィにスイング。

ただでさえ懐かしさを感じさせる彼等の歌声にこの曲はぴったりかもしれません。

このアルバムはこの曲や「Blue & Sentimental」、「I’ll Be Around」という古い曲と「Sunny」や「Gentle On My Mind」といった当時の新しいめの曲をBasieサウンドに載せて唄うという企画。

実はこのアルバムの前年に同じ企画で「The Board Of DirectorsDot DLP 25838というアルバムがあって、その好評を受けての2作目ということ。

前作のアルバムは貫禄のあるBasieを中心に、これまた貫禄では負けないMillesの面々がテーブルについて会議中というジャケットで、タイトルの「役員会議」そのままの重厚だけれど洒落たアルバムでした。

今回のタイトルも「役員会の年度報告」といウイットに富んだもので、選曲のせいもあって前作より幾分モダンなつくりになってる気がします。

しかし元祖Barber Quartetと長い歴史をもつBasie bandとの競演、重厚でありながら全篇に流れるのは大人の粋ですね。

選曲には彼等の持ち歌も多いのですが新しい曲との違和感が無いのは統一感のあるアレンジ、やはりBasie Soundでしょう。

Basie時代のJimmy Rushingの「Sent For You Yesterday And Here You Come Today」やJoe Williamsとのご存知「Everyday」もMills Brothers の色に染まっているのがさすが。

こちらが競演盤の1st 

Mils2

| | コメント (2) | トラックバック (0)

«Ray Charles「Dedicated To You」ABC Paramount ABCS 355