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Dinah Washington「A Stranger On Earth」Roulette SR25253

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今回は Billie Pooleがアルバム「Sormonette」で唄ったDown In My Own Tears」繋がりでDinah WashingtonRoulette時代のアルバム「A Stranger On The Earth」のご紹介。

実はDinahはこのRay Charlesの創唱したR&Bの名バラードを人生で2度録音しています。

最初の録音は1956Mercury Record時代、ちょうどRayの吹き込みの1年後ぐらいのことになると思うのですが、タイトルを「I’ll Drown In My Tears」として

とても素晴らしいR&B,Soulヴォーカルの化身のような録音を残しています。

しかし、どういうわけかMercuryはこの録音をレコードにしていないようです。

私の所有している「The Complete Dinah Washington On Mercury vol.5」の解説にはこの曲は未発表ということでレコード番号が振られていないのです。

この時期はMercuryが「For Those In Love」「The Swingin’ Miss D」「Dinah」「In The Land Of Hi-Fi」という彼女の人生の中でももっとも充実したJazzやジャーズィなスタンダードアルバムをリリースしていた時代。

会社の方針はあの「Dinah Jam」で注目を集めたあと、上記のようなJazzよりのアルバムをリリースすることで彼女をSarah Vaughanよりもさらに黒いJazzヴォーカリストとして位置づけたかったのかもしれません。

そんな時期このSoulヴォーカルの化身のような「I’ll Drown In My Tears」をリリースすることは戦略的に躊躇することだったのかも知れません。

それから5年後、1962年彼女はMercuryからRouletteに移籍します。

そして63年に亡くなる短い期間に90数曲の録音と9枚のアルバム残しています。

ここでタイトルをDown In My Own Tears」に戻した録音は2枚のアルバム「Dinah 63http://bluesvoice.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/dinahwashington_2e65.html

今回ご紹介する「A Stranger On Earth」に収められて発売されています。

この2枚のアルバムに収められているヴァージョンは同じテイクのものだと思いますが、時間があればピッチ等を測ってまったく同じものかチェックしてみたいと思っています。

このルーレットというレーベルはJazzからPopsまで幅広く、悪く言えば節操なくいろんなジャンルのポピュラーレコードを集中的に量産したレーベルですが、それがJazzBluesR&BだとジャンルにこだわることなくDinahのありのままの唄でより自由でモダンな歌を残す結果になったのだと思います。

この「A Stranger On The Earth」は彼女が亡くなってからリリースされたもの。

彼女の残された録音と既発アルバムからブルージィな曲、ブルースよりの曲を集めてアルバムとしてまとめています(本来この曲は「Dinah 63」に収められ、彼女の死後、よりブルージーな選曲の「A Stranger On Earth」に再収録されたものと思われます)。

彼女はデビュー時から「ブルースの女王」と呼ばれていましたが、あまりにもはまりすぎているため12小節のブルースを唄ってもあまり印象が残りません。

やはりスタンダードをブルースにして唄ってしまう、その感触がよいわけでそのもっともよい部分が表れるのがやはりこの曲Down In My Own Tears」のようなソウルバラードだと思います。

このルーレット録音では混声コーラスを従え、まるでゴスペルのようなコール&レスポンス風のアレンジで歌っています。

深さではMercury録音に軍配が上がるかもしれませんが、モダンさではこのルーレット録音に惹かれます。

そう意味でタイトル曲の「A Stranger On Earth」も彼女の黒さとモダンさが絶妙にブレンドされた佳曲だと思います。

このような録音を残したDinah、本当にあのまま彼女が生き続けて、唄い続けていたならR&Bにポピュラーヴォーカルにどのような影響を与え続けていったのだろうかと悔やまれてなりません。

そして彼女の偉大な功績がルーレットという,何でもありのレーベルで終わったことによって埋もれてしまったことも非常に残念です。

この時期の彼女の歌がもっと聞かれ、再評価されることを心から願います。

ルーレットはEMIに吸収され、今ではCD化された作品も多く比較的容易に聞くことができるアルバム多くなってきました、このブログにお立ち寄りくださった方、是非一度お聞きになることをお勧めします。

*このアルバムでは「The Blues Ain’t Nothin’ But A Woman Cryin’ For Her Man」「Nobody Knows The Way I Feel This Morning」「Me & My Gin」などのストレートな12小節ブルースも収められていますがMercury時代のブルースよりもリラックスしてモダンです。

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