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Dinah Washington「The Queen」Mercury MG20439

Queen

このコラムも更新がとぎれとぎれになってしまいましたが、いよいよ300枚目のアルバム紹介です。

記念すべき300枚目はやはりDinah Washington

前回の「A Stranger On Earth」からDinahつながりで彼女のMercury時代中期のある意味ひとつの頂点言えるアルバムThe Queenを取り上げることにしましょう。

なぜ「ひとつの頂点」なのか?

彼女はMercuryと契約してから多くのレーコーディングを行なってきましたが、1953年頃よりJazzに傾倒したアルバムの録音を始めています。

著名なアルバムとしては、良く彼女の代表作として紹介されることの多い「Dinah Jam」が挙げられます。

しかし私はこのアルバムは彼女の良さが出ているとはあまり思いません。

スタジオでの白熱のJamセッションをライブで録った臨場感はあるのですが、セッションという他のメンバーよりも自分を強調する状況での彼女は、大きな声で強くシャウトする場面が多く(もちろんそれも彼女の彼女らしい一面なのですが)、一語、一フレーズを類稀なブルースフィーリングでじっくり歌い込む彼女の最良の部分が、喧騒にまみれて勢いで歌を唄いきってしまって活きていないと思っています。

しかし現在(2011)日本のレコード会社がCD化している彼女のオリジナルアルバムはこの「Dinah Jam」とMercury後期のヒットアルバム「What A Difference A Day Makes」の2枚だけなのです。

私はDinahを初めて聞く方に絶対「Dinah Jam」を勧めません、これを最初に聴くことによって彼女を大きな声でガンガン唄う黒人女性と思われ、その他の彼女のアルバムが聴かれなくなってしまうことを恐れています。

Mercuryは「Dinah Jam」の録音された1954年の前年頃よりJazzコンボでの録音を増やし、自社のJazzレーベルであるEmarcyで「After Hours With Miss D」「For Those In Love」「The Swingin’ Miss D」などの非常に優れたJazz Vocalアルバムをリリースしています。

JazzサイドのDinahを聴くなら「Jam」より先にこれらのアルバムを聴かれることをおすすめします。

情けないことに国内プレスはありませんが、輸入盤なら安価に入手できる時代となりました。

彼女はEmarcyでさらにゴージャス感のあるアレンジの秀作「Dinah」「In The Land Of Hi-Fi」、そしてMercuryからFats WallerBessie Smithへのトリビュート2作をリリースし、そして58年にあの「Newport Jazz Festival」への出演と、Jazz Vocalistとしての高みに昇っていきます。

Newport」での実況盤「Newport’58」がリリースされた翌年、同フェスのドキュメント映像を編集した映画「Jazz On A Summer’s Day」が封切られた59年に、EmarcyではなくMercuryからリリースされたのがこの「The Queen」です。

59年のリリースとなっていますがほとんどの音源が録音されたのが57年、まさに彼女の知名度が上がっていた時期にポピュラーレーベルのMercuryから、その名も彼女の輝かしい俗称「The Queen」のタイトルで満を持して出された頂点の1枚だということになります。

アルバムの1曲目は「All Of Me」。

Newportで歌われ、映画「Jazz On A Summer’s Day」で彼女を強烈に印象づけたこの曲は、実はNewportのライブの8ヶ月前に一度スタジオ録音されていた訳で、それがあのコンサートでの自家薬籠中に歌う彼女につながっているのかなと納得します。

B面の1曲目はさらにこのアルバムで最も重要な曲「I Remember Clifford」が収録されています。

あの「Jam」で共演したClifford Brown56年に自動車事故で亡くなり、Benny Golsonが翌年作曲したこの哀悼曲を一番初めに録音したのはDinahではないかと思います。

*因みにCarmen McRaeDeccaのアルバム「Carmen for Cool Ones」の為にこの曲を録音したのが5712月、Dinahのこの録音は11月)

Clifford競演した彼女だからこそこの曲を最初に唄う権利と技術も併せ持っていたわけで、それがこの名唱を生み出していると言っても良いのではないでしょうか?

亡きCliffordの思い出を切々と感情を込めて唄う導入部、溢れんばかりの想いをひたすら抑えて迎える終章、まさに絶唱です。

彼女の想いを代弁するかのようなラストのトランペットソロ(多分Clark Terry)等アレンジも秀逸なこの素晴らしい曲が収められている、彼女のひとつの頂点と位置づけても良いアルバムが現在(2011年)、アメリカ本国でもCD発売されていないのがなんとも残念でたまりません。

このアルバムがリリースされた59年、Mercuryはあの「What A Difference A Day Makes」を発売、次のターゲットであるポピュラーヴォーカルの頂点を目指す時代が始まって行くのです。

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